高濃度有機性汚水を浄化する伏流式人工湿地ろ過システムとは?
水質浄化用の伏流式人工湿地とは?
自然の湿地の水質浄化機能を高めて活用することを目的として、人工的に作られた湿地は人工湿地(Constructed wetland)と呼ばれます。人工湿地には 、表面流式(Surface flow)と伏流式(Subsurface flow)があります。伏流式は表面流式よりも浄化能力が高く、汚水の濃度や量の変化に対応でき、寒地でも冬季を含めて通年浄化できるなどのメリットがあります。伏流式には汚水を上から下にろ過する好気的な鉛直流(Vertical flow)と、水平方向にろ 過する嫌気的な水平流(Horizontal flow)があり、鉛直流(好気)と水平流(嫌気)を組み合わせたハイブリッドシステム(Hybrid system)は、特に窒素浄化能力に優れています。伏流式人工湿地は、1980年代以降に欧州から世界に普及してきた比較的新しい技術で、生活排水を始め、畜産排水、食品工場排水、重金属廃水など様々な汚水浄化に適用され、経済的な排水処理法としての利用が拡大しています。
伏流式人工湿地のメリット
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費用が安い
(特に運転費用が安い) -
汚水の濃度や量の変化に対応
できる -
寒地でも冬季を含めて通年浄化
できる -
ハイブリッド型は窒素浄化能に
優れる
伏流式人工湿地ろ過システムの仕組みと働き
高濃度有機性汚水を浄化できる伏流式人工湿地ろ過システムは、汚水の濃度と量、目標水質に応じて、好気的な鉛直流ろ床と嫌気的な水平流ろ床を組合せて設計します。鉛直流ろ床には、間欠的に汚水を供給するために、自動サイホンやフロートスイッチ付きのポンプを用います。一部の鉛直流ろ床は、処理水の一定割合を循環させて再びろ過することにより浄化効率を高めます。好気・嫌気のろ床の組合せや循環型の鉛直流ろ床の働きにより、汚水中の窒素が効果的に削減されます。有機物によるろ床表面の目詰まりを軽減するため、プラカゴや金属格子などのバイパス構造を用います。また、植物の生育期間(春~秋)には、鉛直流ろ床の表面を分割して順番に使い、ろ床の表層を乾燥させます。ヨシ等の植物やシマミミズなどの小動物も表層の目詰まりを軽減します。ろ床表層に過度に堆積した有機物は、必要に応じて、数年~十数年に1回程度のペースで機械的に除去します。浄化のためにヨシなどの植物を刈り取る必要はありません。
農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合開発機構)の解説動画
植物(ヨシなど)の役割
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芽や茎が目詰まりを軽減し
透水性を確保 -
冬季の凍結を防止する
断熱効果 -
人工湿地に住む生物の生態系を
支える -
浄化のために植物を刈り取る
必要は無い